新型コロナの影響で家庭内での暴力が増加しているという問題が起きています。
そこで、DV被害者支援、とくに子供の心のケアについて、
専門家の方からご意見を寄せていただきました。
専門家の方のご紹介です。
◆特定非営利活動法人湘南DVサポートセンター理事長
瀧田信之氏
(プロフィール)
国土交通省の水難事故防止検討委員、公衆衛生等社会心理を
米国等で学び1999年にドメスティックバイオレンスの被害者支援専門機関である湘南DVサポートセンターを設立。
公衆衛生分野である暴力予防啓発事業として中学校・高校・大学生向けのデーティングバイオレンス防止プログラを展開。
近年、内閣府全国暴力相談員研修、自治体の配偶者暴力相談支援センター職員研修、東京都女性相談職務者研修などの講師を務める。
また、スクールカウンセラー等の研修講師をつとめ大学との共同研究も実施している。
慶応大学、関東学院、学芸大学、神奈川大学などで講師も担当。
著書に「それ、恋愛じゃなくてDVです!」WAVE出版など、DV関係の著書論文多数。
◆湘南DVサポートセンターHP
http://kodomo-support.org/
①「自粛生活後の子供の心のケア」
さて、感染拡大の山を一つ越し、いよいよ各地で学校が再開されています。
2月に感染拡大が報道された時より東日本大震災後の東北の学校の様子が脳裏をよぎりました。
今回は多くの子どもたちが自宅での自粛生活を強いられ、外部、また他者との交流が絶たれることになりました。
震災後に社会不安から多発したドメスティックバイオレンスをはじめとする暴力、または虐待等の事案が懸念していたとおり昨今各地で報告されています。
マスコミ報道やソーシャルメディアで話題となる事案はごくごく一部であり、表面化はしない、内在化してしまうケースが多いのが現実です。
心にある不安を親に話せないなら、信頼できる大人に話してほしい、そして聴いた大人はスルーせず、抱え込まず、またその気持ちを専門家に聴いてもらいましょう。
➁「自己肯定感を意識したプログラム」
日ごろから、ワークショップを通して子どもたちの心を開き、他者を思いやる、また必要な時には助けを求められる力、つまり自己肯定感を意識したメンタルプログラムの展開が必要でしたが、新型コロナウイルス感染は健康被害問題だけではなく経済的問題として子ども、保護者、先生方、地域の大人たちも大きな社会的不安を与えることになってしまいました。
私たちは、その様な不安を抱えて学校生活を始める生徒、保護者のため、また先生方も一緒に新しい価値観、ニューノーマルを意識しながら誰もが安心できる学校生活を取り戻せるために従来のプログラムを少し進化させなくてはなりません。
「従来の道徳事業+新型コロナウイルス感染後の人間関係づくり編」の実践が求められています。
➂「ニューノーマルを家族で話し合う」
新型コロナ感染症予防のための自粛生活、
「Stay Home Stay Safe!」、「ソーシャルディスタンシング」等、様々な不便さや不自由さを強いられた数ヵ月の間のこの時間をどのように有効に使えたかはそれぞれの家族の想像力の問題であったと思います。
まさに3密の関係性である‟家族”でその間各自が好きなことに没頭するたいせつな時間にもなり、外部との接触にはソーシャルメディアが大活躍し、学校の授業や企業の会議までがリモート化した今回の緊急事態はコミュニケ―ションの在り方を見直す絶好のチャンスです。
ニューノーマルとはどのような世界なのかを家族間で話し合い備えるよい準備機関にできたはず。
政治や行政から押しつけられたシステムやルールに不満をぶつけイライラするよりもその上を行く新しい価値観を家族単位で話し合っていれば行政の想像力をはるかに超える、
新しい生き方、心地よい生き方、真のニューノーマルを実践できるはず。
④「想像力を失わない社会へ」
私の地元は小学校、中学校も分散登校が始まります。
7月からは元通りの授業体勢に戻すということらしいです。
子どもたちの学力維持や世界と共同するための9月入学案も本気に議論されたという情報は私たちには届かず、あっさり見送られた。
9月入学が全てという考えはないけれど、聞こえてくるのは経済的理由によるというものばかり、、、
教育は20年、30年先への投資のはず!
私たちは学び、働き、交流し、議論し、悩み、進歩してきたのに、、、、
未来に何を残そうとしているのかでその真価が問われる時代に、、、大手メーカーもIT企業も金融機関も利便性、快適性の追求だけでなく人が悩む力を失わない、想像力を失わない
社会を目指してほしい。
COVID 19はあっという間に私たちに経済的、技術的常識を超えるものがあるということを思い知らせる結果となってしまいました。災害もパンデミックもその経過や結果、終息後の人の心の動きは社会心理的切り口で予想できたはず。
⑤「今こそ、学校、地域、行政の連携を!」
いじめというテーマで暴力防止プログラムを公立の学校ではじめて13年。
何10万人という児童生徒と出会ってきました。
クラスで何らかのトラブルがあるのを多く見てきて不思議に思ったのがその原因は本当に学校にあるのかということ。
確かにクラスは多人数で、支援が必要な子どもの不規則発言や立ち歩きが当たり前のようにあるクラスもあり、授業が成り立っているのか?と不安になる時もあります。
また生徒が地域・家庭での課題を背負って登校していることをも社会は無視してはなりません。
そのような中、ニューノーマル時代、感染をおこさず子どもたちの健康を維持するには先生方の果てしない労力が求められるのではないかと危惧します。
子どもたちの毎日の健康管理、給食の配膳の管理、下校後の教室やトイレの消毒まで、、、子どもたちの身体の健康、心の健康を維持し、そして勉強を教える。
これを全部先生に押しつけていいはずがない。
保護者、地域の大人は今こそ学校のサポーターになれるはず、、、、
そして学校も行政も地域と連携することをおそれないでほしい。